小顔を呼び出そう!
マーケットに一度出てすぐに消えてしまうような物質もあるのです。
痛みもなく、一〇〇パーセント安全にシワが取れたり、乳房が大きくなったり、たとえ術後の痕が気に入らなくてももとどおりになったりする、そんな魔法のような注入法の話があればこれにこしたことはないでしょう。
今後の発達の如何によっては可能になってくるかもしれません。
ただし、現時点では、確証のあるこれらの方法はみつかっていません。
注入法の歴史のなかで我々が学ばなければならないのは、昭和一二〇〜三〇年ごろにあった各種異物注入法による悲劇です。
悲劇というのは、今でいう「プチ整形」的な処置で捉えられている内容を聞くと、異物注入の過去の惨事を思いだすからです。
第二次世界大戦後、オルガノーゲンと称される物質を乳房内に注射する方法が乳房増人術として広告され、大勢の人たちがこの手術を受けました。
後に、オルガノーゲンによる乳房増人術は間題が多いことがわかり、当時、身体に無害な物質と信じられていたシリコンジェルの注入法に置きかわっていきました。
ところが、このシリコンジェル注入による乳房増大は多くの場合、はじめの数カ月、もしくは数年は平穏に経過したものの、その後、注入部位は傾くなって岩のようにゴツゴツとし、十数年後にはそれらの一部が皮膚の表面に現れ、乳房は変色し、あるいは内出血などをともない、あるいは感染し、あるいは皮膚に穴を開けてしまったのです。
また、現在、シワ取りの方法として行われているコラーゲンやヒアルロン酸の注入とまったく同じ方法で、かつては、注射器を用いて皮膚の真皮層にシリコンオイルを打ち込むことにより、皮膚に張りをもたせシワを取るという施術も、実にたくさんの人に施行されていました。
さらに、シリコンオイルの注入による鼻の隆鼻術なども行われていたのです。
皮膚に打たれたシリコンも、乳房と同じように囲〜五年が過ぎると石のように硬くなりました。
鼻に注入された例をみると、注入異物は球形の突起物に変化して、鼻が異様な外観を示してしまうことも少なくありませんでした。
このような患者さんが、いまでもその修正を求めて私のもとを訪ねてくることは決して珍しくないのです。
異物注入による美容的処置は当時もいまも変わらず、「簡単」を合い言葉に「安全」がうたわれています。
そして、これらの処置を受けた人の話を聞くと、異物注入の処置を受けた理由は、「安全」でかつ「簡単」といわれていたからだと答えます。
ただ、その結果はとても「安全」「簡単」という表現でみあう内容ではありません。
しかも当時、シリコンオイルは注入しても安全だと信じていた医師も多かったのです。
と長く形成外科∵美容外科に携わっている医師ならば思っています。
しかし、現在、美容外科の分野がかなり発展していると思われる諸外国においてさえ、いまだに顔面のシワに対してシリコン注射が行われている節があります。
また、日本でも、顔面のシワに対してシリコン注射を受けた患者さんを最近になってもみないわけではありません。
よくよく尋ねてみると、海外で施術を受けたり、日本国内の無資格のだれかから注射されたと話す人もいます一、これらは例外だとしても、シリコンオイルのように、明らかに後に問題が生じるとわかっている物質を注射する行為は、いまでは医療の世界で「悪い医療」に分類されます。
ごく最近に「アメイジングジェル」という名前の注入用のジェルが外同で製造販売されています。
これらは乳房の増人のみならず、顔をふっくらさせたり、鼻を高くしたり、蝕のシワをとったりするために使われていると聞いています。
ただ、中国で有名な上海の第九市民病院の医師によると、この物質を注射することで起こる間題はシリコンオイルの注入と同様か、それ以上に探刻になる危険性があるということです。
けるのであれば、その直後には変化がないとしても数年後には何らかの書を人体にあたえる物質があることは知っておくべきです。
今日、日本で行われている異物注入法は、過去に使用された物質よりは比較的安全な物質が用いられていると、私は信じています。
しかし、体内に注入するということは、身体の細織の間にその物質が埋め込まれるか、吸収あるいは分解されていくことになります。
そのため、埋め込まれている状態や吸収の過程も含めて、その安全性が証明される必要があると思います。
たしかに施行に時間はかかりませんし、受ける側としても簡単そうに感じると思います。
しかし、「プチ整形」という形式で行われる、各種注射による美容目的の治療を受ける際には、注入される物質がどのような効果と副作用をもっているか、たとえば一か月で消失するのであればどういう過程で体外に排泄されるのか、あるいは不活性化されるのかなど、施術を行う医師に詳しく尋ねる必要があります。
何しろ美容的で使用されるこれらの物質は、二〇種類にもおよぶのです。
注入物のなかには、プラスチックのようなものが、小さな球形として含まれていることもあります。
注入物内の小さな異物は、体外に排泄されることなく、ほぼ永続的に体内に残ります。
注入法は、リスクと得られる効果を考え、あなたの理解のもとに施行されるべきものです。
もし、六カ月後に注入物が完全に安全に消失するのであれば、ためしに鼻を少し高くしてみようといった目的で、これらの注入法を受けることはよいことかもしれません。
しかし、このような使用方法は、場合によってはひどいしっぺ返しをあなたに与える危険性があることを理解しておいてください。
いくつかあるコラーゲンのうち、歴史が古いのは牛由来のコラーゲンを利用するものです。
コラーゲンを注入することによって、シワの底上げは達成されます。
この効果は三カ月から六カ月続きます。
その後、注入されたコラーゲンは体内に吸収され、もとの状態に戻ってしまいますから、この方法でシワに対処しようとするのであれば、一〜二カ月から六カ月おきに注入を繰り返していく必要があります。
注入されるコラーゲンは、粘度の高いものと低いものがあり、どれを使うかはシワの場所や術者の経験を加味して選択されます。
このコラーゲンを注入するということは、牛の皮膚の一部がどのように処理されているかにかかわらず、人間の体内に取り入れるわけですから、アレルギー反応を起こす可能性がありますバリですから、少なくとも囲週間からしハ週間前にテスト注射を行い、本剤に対しアレルギー反応が生じないことをたしかめておく必要があります。
ただ、このアレルギー反応は数回梗用した後に突然に起きることもあります。
確率としてはたいへん低いものですが、ゼロではないことを知っておいてください。
このコラーゲン注射を顔面や身体の増人目的に用いることは、アメリカのFDA(食品医薬品局)は認めていません。
また、牛由来であるがゆえに、現在、BSE(狂牛病)との関係が取りざたされています。
このことに対する製造業者の安全性の説明は、詳しくはコラーゲン株式会社か、またはFDAに問いあわせてみてください。
このコラーゲンもしくはコラーゲン類似物質のなかには、自分の皮膚の一部を用いてそこから直接つくりだしたコラーゲンを注入するオートデルムと呼ばれる方法や、耳の後ろなどから採取した真皮層を培養して得られるコラーゲンを注射するイソラーゲンという方法も開発されています。
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